根管治療をしてもらっているが消毒だけで前に進まない、何度治療をしてもらっても腫れを繰り返してしまうなどいつまでも治らない治療に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。根管治療とは歯の神経が死んでしまった根の中を消毒し、長く使うための治療です。しかし、実は根管治療は根管治療専門医が行わないと治る確率がかなり低くなってしまうのです。根管治療専門医では見えない部分を見える状態にして治療を行っているのです。今回は根管治療専門医が行っている最新治療法と一般歯科で行っている治療の違いをお伝えします。ぜひ、参考にしてください。
1.根管治療(こんかんちりょう)とは

根管治療は歯の神経が死んでしまった時、歯の根の中を消毒し、細菌が感染しないように薬を詰めて、神経が死んでしまった後にも歯を長く使っていくための治療です。この根管治療が精密に行われるかで歯の寿命は変わってくるのです。何度も感染し、治療を繰り返せば、歯はもろくなり割れて、抜歯が必要になります。

下のレントゲンでは、根の先に膿が溜まっている黒い部分の根尖病巣(こんせんびょうそう)があります。

根管治療後、黒い部分の根尖病巣が無くなっているのがわかります。

2.根管治療の専門医が行っている最新治療法と一般歯科での治療の違い

2−1.根管を3次元的に診断するCTレントゲン

歯の根の数や形は同じではなく、人や歯によって違います。根管治療専門医では3次元のCTレントゲンを撮影して、複雑な歯の形を正確に診断してから治療を行います。

一般歯科の治療

一般歯科では2次元のレントゲンで歯の根の形を確認します。そのため根が重なっていたり、根が曲がっていたりするとレントゲンでは分かりにくいため経験や勘で治療をしなくてはいけないため治療の精度が下がります。

2−2.マイクロスコープによる超精密根管治療

歯の根の中は細く、暗く通常では見えない部分です。根管治療専門医ではマイクロスコープを使って、歯の根の中の状態を20倍に拡大することができます。今まで見えなかった根の先端まで見ながら治療をすることができるために、精密な治療を行うことができます。

一般歯科での治療

一般歯科では歯の根の入り口の部分だけを見ながら治療をします。根の先端部分までの距離を測る機械を使いながら入り口と距離だけを頼りに治療を進めていきます。そのため汚れが残っていても気付きにくく、何度も消毒を繰り返し、治療期間が長くなってしまうことがあります。

2−3.唾液による感染を防ぐラバーダム

根管治療は歯の根の中を消毒する治療です。根管内に唾液が入り込むと細菌が感染し、より悪化してしまいます。そのため根管治療専門医ではラバーダムというゴムのシートを歯にかけて唾液が歯の根の中に入り込まないようにして治療を進めていきます。詳しくは「歯の寿命はこれで決まる!歯の根の治療の根管治療と全情報を大公開」を参考にしてください。

一般歯科での治療

一般歯科でもラバーダムを使って根管治療をしている歯医者も多くいます。しかし、多くの歯医者ではラバーダムをせず、ガーゼなどで唾液を防ぎながら根管治療を行っているため、唾液が根の中に入りやすい環境で治療をしています。

2−4.歯の再生力が高いMTAセメント

MTAセメントは歯を再生させる能力の高い材料です。細菌に感染してしまった根の中の汚れをきれいにしていくと、歯は徐々に短くなったり、薄くなったりします。MTAセメントを使うことによって歯を再生させ、歯を自然に治癒させることができます。

一般歯科での治療

MTAセメントは保険適応外の材料です。材料の費用だけで何万円もするために一般歯科で使うことができない材料です。そのため状態が悪い歯の根管治療は治すことができなく、症状が続いてしまうか、抜歯をするかの選択となります。

2−5.治らない歯根嚢胞は歯根端切除術

歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)とは細菌や感染源が歯の根の外に出てしまい、根管治療では治らないため、根の先の一部を切断し、根の先から薬で閉鎖することです。根管治療専門医ではマイクロスコープで確認しながら行うことができ、MTAのセメントで根の先を閉鎖することができます。詳しくは「歯根端切除術/根の治療では治らない膿の袋を取り除く」を参考にしてください。

一般歯科の治療

一般歯科でも歯根端切除術は行うことができます。ただし、マイクロスコープやMTAセメントは使うことができないため、精度が低くなってしまいます。

2−6.再植手術と歯根端切除術

奥歯の歯が根管治療で治らない場合、奥歯は骨が厚いため歯根端切除ができないことがあります。その場合歯を一度、抜歯して口の外で歯根端切除術を行い、再度歯を戻す再植(さいしょく)手術を行います。再植手術の際もマイクロスコープとMTAセメントで超精密治療を行います。

一般歯科での治療

一般歯科でも再植手術を行っているところもあります。ただし、マイクロスコープやMTAセメントは使うことができないため、精度が低くなってしまいます。(根管治療機器)

3.根管治療専門医での費用

前歯 4万円〜25万円程度

小臼歯 5万円〜27万円程度

大臼歯 6万円〜28万円程度

根管治療専門医によって費用には差があります。別途、検査代や材料代がかかる場合もあります。また、セラミックの料金は別に必要です。

4.根管治療はインプラント治療以上に価値のあるもの

4−1.海外の根管治療の費用

先進国では一般に根管治療は根管治療専門医が行います。根管治療の金額はアメリカで30万円、スペイン、イタリアで15万円、フィリピンで5万円です。日本では保険診療で行う根管治療は数千円という安さです。そのため最新の治療を行うことができないのです。抜歯後のインプラントには30万円かける日本の場合は抜歯前の大切な歯には保険診療では数千円という治療を行っているのです。詳しくは「やってみたいインプラント治療/実際かかる費用はいくら」を参考にしてください。

4−2.歯の1本の価値は100万円

平成13年に当時17歳が誤って違う歯を抜かれたことに対する損害賠償に合意したというものもありました。その損害賠償額は約118 万円です。医療品メーカーのアンケートでは1本の歯の価値は平均で96万円でした。歯の1本の価値は大体100万円でしょうか。

4−3.保険診療の利点と欠点

保険診療で根管治療を行うことができることは大きな利点です。しかし、治療方法は何十年も前の基準で行っているため、日本の根管治療の成功率は60〜80%という低い数字です。また、見えない中行われている根管治療によって長期間消毒を繰り返す治療になってしまう方もいます。

5.根管治療後の歯にはセラミックをしたほうがいい理由

5−1.歯の破折を防ぐためのファイバーの土台

歯の神経を失った歯は徐々に水分が抜けて脆く、割れやすくなります。保険で行う金属の土台だと硬すぎて、歯が割れてしまうことがあります。また、金属が錆びて、隙間ができ細菌が入り込みやすくなります。そのためグラスファイバー製の土台で歯と一体化させることによって歯の破折や細菌の侵入を防ぎます。

5−2.細菌の侵入を防ぐための接着剤

歯には象牙細管(ぞうげさいかん)という細い管があります。この管を通って細菌が歯の中に侵入し、新たな虫歯や歯の根の中でまた細菌が増えてしまいます。歯とセラミックに強力に着く接着剤を使うことによって象牙細管からの細菌の侵入を防ぎます。

5−3.被せ物の劣化を防ぐためのセラミック冠

銀歯は水分がある環境では錆びたり、イオン化して漏れ出したりして、口の中で安定していないものです。セラミックは口の中でも安定している材料なので劣化の心配がありません。そのため歯とセラミックの隙間から虫歯になることが少ないために根管治療をした歯を守ることができます。詳しくは「セラミックの歯/彼らが銀歯にしない6つの理由」を参考にしてください。

まとめ

根管治療専門医で根管治療を行うのは保険診療で行うよりも高価です。しかし、1本の歯の寿命や価値を考えれば決して高いものではないのです。将来インプラントで費用がかかることを考えると専門医で根管治療をして歯を残しても同じような費用ですし、外科的な処置や人工物を骨に入れるリスクを考えれば利点は大きいのではないでしょうか。