痛みに配慮した治療とは
「矯正は痛い」というイメージをお持ちの方は少なくないと思います。確かに、装置を着けたり調整したりすると、3~5日間くらいは、歯が浮いたような感覚になったり、歯に痛みが出たりすることが多いです。中には、「3日間全くご飯が食べられなかった…」、「頭痛がした」という話も聞きます。

痛みは個人差が大きいのですが、痛みを最小限に抑えつつも効率よく歯を動かすことで、「歯根吸収*」などの歯のダメージを抑えることにも繋がりますマイクロモーター
ここ最近の矯正学と材料学の進歩により、以前よりも「歯に優しい」治療が可能となりました。現在、考えうる最先端の治療技術を二つご紹介します。

*歯根吸収:アゴの骨の中で歯根が本来の長さより短くなること。
ローフォースワイヤーシステム(超弾性ワイヤーの応用)
最新のワイヤー(歯に接着する装置「ブラケット」に通す針金)の多くは、「超弾性」、「形状記憶」という性質を持っています。簡単に言うと、非常に柔らかく、弱い力を継続的に歯に伝えて、元の形に戻ろうとする力によって歯を動かします。
この超弾性ワイヤーによって、歯に与えるダメージがより小さくなり、痛みが少なく、かつ効率的に歯を動かすことができます。

このように歯列矯正に優れた材料でしたが、「形状記憶」という性質から、自由に曲げたり調整したりすることができませんでした。しかし、最新の矯正治療では、この形状記憶の超弾性ワイヤーを、ヒートベンダーという特殊な機器によって処理し、調整ができるようになりました。
これは矯正治療では画期的なことで、一部の矯正歯科で対応することができます。
ローフリクションシステ(摩擦の少ない装置)
歯列矯正の「痛み」の原因の一つが、歯を動かすために与える矯正装置の力(矯正力)です。
治療中の痛みを軽減するために、矯正装置の改良が進み、「歯に接着したブラケットにワイヤーを縛りつける装置」から、「縛りつけない装置」ができました。

『ローフリクションシステム』もその一つです。
ローフリクションシステムは、ブラケットの中をワイヤーが自由にすべることができる構造なので、従来のブラケットにワイヤーを縛る装置で生じていた  摩擦が抑えられて、より小さな矯正力で歯を動かせるようになりました。これにより、歯を動かしている治療中の痛みが軽減し、治療期間も若干短くなりました歯科機器

現在も装置の改良は進み、このローフリクションシステムを採用した装置は、金属の表側矯正装置だけでなく、目立たない審美ブラケットや、見えない裏側矯正用のブラケットなど、さまざまなタイプのものが開発されています。
これにより、患者様はより快適でライフスタイルに合った治療を受けられるようになりました。