原因不明の歯の痛みが続くと、「知覚過敏では!?」と言われますが、ストレスが痛みを増すこともあるとか。知覚過敏とは何なのか、どうして起こるのか、自分で予防する方法などについて、歯学博士で口腔衛生外科が専門の江上歯科(大阪市北区)・江上一郎院長にお尋ねします。
■歯の象牙質が露出すると痛みが出る
筆者は歯の痛みに敏感で、自分を「痛がり」だと思っています。それを知覚過敏と呼ぶと思い込んでいましたが、江上先生は次のように否定します。
「知覚過敏とは、歯科用語では『象牙質(ぞうげしつ)知覚過敏』と言い、歯の表層のエナメル質の内側の象牙質(ぞうげしつ)と呼ばれる、軟らかい部分の露出が原因で起こる疾患です。『痛がる人』を指すのではありません。
歯のエナメル質には神経が通っていないので、ここだけが傷ついても痛みはありません。が、象牙質には象牙細管という神経があり、ここに刺激があると痛みや違和感が起こります。これが象牙質知覚過敏で、一般に知覚過敏と呼ばれています」
歯の疾患の一つなのですね。具体的な症状としては、
「むし歯ではないのに、歯が痛む状態です。特に、水やビールなど冷たいドリンクがしみる、デザートを食べたらジーンと痛む、つまようじや歯ブラシ、また、風があたるとビリッと痛むなどです」(江上先生)
次に江上先生は、「象牙質の露出の原因は、大きく3つ挙げられます」と指摘します。
1.過剰なブラッシング
歯磨きのとき、力を入れすぎる、雑に横磨きをする、毛先が硬い歯ブラシで磨く回数が多いなど。歯の表面のエナメル質を削り取って、歯ぐきが退縮する(下がること)原因になります。
2.歯周病
歯周組織が炎症を起こし、歯ぐきが退縮することがあります。
3.歯ぎしり
睡眠中の歯ぎしりや、頻繁に歯を噛(か)みしめていると、エナメル質がはがれることがあります。
■ストレスがあると、さらに痛みに敏感になる
「ストレスがあると、知覚過敏がより進みます」と江上先生は注意を促します。
「人間はストレスがあると神経が興奮状態になって、痛みに反応しやすくなることが分かっています。刺激の度合いが低くても痛くなるということです。
睡眠不足や心身の疲労が強いと、痛み具合は刺激によって、ひりひり、きりきり、じーん、ずきずき、全体が浮くなどさまざまですが、痛む時間も痛みの度合いも増してきます」(江上先生)(超音波スケーラー 家庭用)
筆者も、徹夜明けには歯全体が浮いて違和感がある、歯磨きをすると歯ぐきが痛むなど、思い当たります。自分で予防する方法について、江上先生はこうアドバイスをします。
「まずは、鏡で歯ぐきが退縮していないかをよく確認してください。隣り合う歯の根元に隙間ができると要注意です。そして、丁寧にやさしくブラッシングをすることが大切です。特に、歯と歯ぐきの境目の歯垢(しこう。プラーク)を除去して、歯の根元が露出するのを防ぎましょう。エナメル質は軟らかいものです。汚れているからと力任せに磨くとはがれやすくなります。
また、睡眠を十分にとるなど、ストレスをためない生活習慣を心がけることです。
知覚過敏は神経の病気だと自覚してください。歯周病や歯肉炎があれば早めに受診し、また、歯ぎしりがひどい場合は歯科医院でマウスピースによる治療を受けましょう」(歯科診療ユニット)
知覚過敏の症状が進むと、冷たい水がしみるだけではなく、歯が痛んで水も飲めない、強烈な痛みがおさまらないようになるのだとか。「このごろよく歯がしみるなあ」と思ったときは早めに歯科に相談し、また、ストレスがたまっていないか、疲れていないかを見つめる機会ととらえましょう。