虫歯をそのままにしたり、根の治療がうまくいかないとできるのが根尖病巣です。根尖病巣は症状がなく進行することが多く、急に歯茎が腫れたり、痛みが出たりする病気です。しかし、実は根尖病巣は歯だけでなく、副鼻腔や顎の骨、手足にも症状が出ることがあるのです。今回は根尖病巣で起こる8つの症状と治療法をお伝えします。ぜひ参考にしてください。
1.歯の根尖病巣(こんせんびょうそう)とは

歯の根の先にできる膿の袋のことです。歯の神経が死んでしまうと、神経が腐って細菌が増えます。硬い歯に囲まれているため自然に治ることができず、根の先から細菌や毒素を骨の中に出します。この細菌や毒素によって骨が溶かされ、根の先に膿の袋ができた状態を根尖病巣と言います。また、歯根嚢胞(しこんのうほう)と呼ばれることもあります。

2.根尖病巣の症状

2−1.症状もなく知らぬ間にできることが多い

根尖病巣の多くは症状がなく、徐々に大きくなります。歯医者でレントゲンを撮った時に指摘されることも多い病気です。レントゲンを撮影した時、根の先に丸く黒い部分が見えると根尖病巣の可能性があります。

2−2.歯茎におできのような膿の出る穴ができることがある

根尖病巣の中の膿が溜まると、歯茎に白いおできのような穴を作って膿を出します。このおできのようなものは出来たり、治ったりを繰り返します。痛みや腫れは出ないことが多いですが、口臭や口の中のネバネバ感があります。詳しくは「歯茎にできた白いできものの正体と治療法」を参考にしてください。

2−3.噛むと痛い

根尖病巣がある歯で噛むと違和感や痛みを感じることがあります。歯の根の周りには噛んだ時に硬いものや軟らかいものなどを判断する歯根膜(しこんまく)というものがあります。根尖病巣によって歯根膜に炎症が移ると噛んだ時に痛みとして感じます。

2−4.急に歯茎が腫れる

根尖病巣は急に腫れを伴うことがあります。体の抵抗力が低下した時に腫れが強くなります。根尖病巣による腫れは顔の形が変わるくらい大きく腫れたり、口が開かなくなることもあります。詳しくは「歯茎が腫れた時、自宅でできる応急処置と治療法」を参考にしてください。

2−5.歯の周りの骨が溶かされ歯が揺れる

根尖病巣によって歯の周りの骨が溶かされ、歯がグラグラしてくることがあります。歯は歯の周りの骨によって支えられています。根尖病巣が大きくなると歯を支えている骨が溶かされ、歯が揺れてきます。また、より大きくなると周りの歯まで揺れてくることがあります。

2−6.上顎の根尖病巣は副鼻腔炎の原因になる

上顎の奥歯の根の先は副鼻腔の近くにあります。根尖病巣が大きくなると副鼻腔に入り、細菌が感染して副鼻腔炎になります。副鼻腔炎になると歯の痛みや頭痛、口臭、鼻づまりなどが起こります。詳しくは「歯性上顎洞炎になる7つの原因と治療法/激痛や頭痛も引き起こす」を参考にしてください。

2−7.下顎の根尖病巣は骨髄炎になる

下顎の根尖病巣が大きくなると骨髄に細菌が感染し、骨髄炎になることがあります。通常は体の免疫細胞などが骨髄まで細菌が侵入しないように防御しています。体の抵抗力が下がった時や根尖病巣があまりにも大きくなってしまった場合は骨髄炎になることがあります。骨髄炎になると入院し、点滴で抗生物質を体に入れる必要があります。

2−8.手足に湿疹が出ることもある

根尖病巣にある細菌は血液を介して全身に回ります。根尖病巣内にある細菌がアレルギー物質となり、手足に湿疹ができる掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)になることがあります。掌蹠膿疱症は金属アレルギーによってもなることがあります。

3.根尖病巣の治療法

3−1.歯の根の治療の根管治療(こんかんちりょう)をする

根尖病巣の治療には初めに歯の根の治療である根管治療を行います。神経が死んでしまった歯の根の中には、血液が流れていないために体が自然に細菌を取り除くことが出来ません。感染してしまった神経の繊維や歯の一部を削り取って、再び細菌が感染しないように薬を詰めます。詳しくは「歯の寿命はこれで決まる!歯の根の治療の根管治療と全情報を大公開」を参考にしてください

3−2.根の先を切断する歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)

歯の根の中は複雑で根管治療では治らないことがあります。根管治療で治らない根尖病巣は歯茎の方から切って、外科的に根尖病巣を取り出す歯根端切除術を行います。歯根端切除術は根尖病巣の切除、根の先の一部の切除、根の先に蓋をする3つの処置を行います。詳しくは「歯根端切除術/根の治療では治らない膿の袋を取り除く」を参考にしてください。根管治療機器

3−3.歯根端切除術+歯の再植術

歯根端切除術は前歯や上顎など骨が薄い部分でしか出来ません。下の奥歯は骨が厚く、歯茎から根尖病巣を取り除くことができないために、根尖病巣がある歯を1度抜歯し、根尖病巣を取り除き、戻す再植術を行います。

4.根尖病巣の原因

4−1.虫歯が進行すると根尖病巣ができる

虫歯が進行すると歯がしみたり、痛みが出たりします。その症状は一旦収まります。その後神経があった管を通り、細菌が歯の根の周りの骨を溶かし、根尖病巣ができます。

4−2.根管治療がうまくいかないと根尖病巣ができる

歯の根は複雑な形をしています。通常の根管治療の成功率は80%程度なので、すべての治療がうまくいくわけではありません。最近はできるだけ成功率を上げるためにCTレントゲンや手術用顕微鏡のマイクロスコープを使った治療で治療を行う歯医者が増えてきています。

4−3.外傷などにより歯に強い刺激が加わると根尖病巣になる

歯に強い力が加わると歯の根元で神経が切断され、根尖病巣ができることがあります。特に前歯をぶつけたりすると応力が根の先端に加わり、神経の繊維や血管が切断され、根尖病巣ができます。歯の新陳代謝が失われ、歯が黒ずんできます。

4−4.歯の突起の中心結節が折れると根尖病巣になる

小臼歯に出べそみたいな突起のようなものを中心結節(ちゅうしんけっせつ)と呼びます。この突起には神経に管があり、折れてしまうと細菌が神経に感染し、根尖病巣ができることがあります。中心結節の破折は小学生くらいに起こることもあり、歯の根が完成する前に根尖病巣ができることがあります。歯の根ができるように誘導しながら根管治療をしていきます。

まとめ

根尖病巣は多くの場合歯医者でレントゲンを撮らないとわからないことが多いのです。3年に1回程度、歯や歯茎の中に根尖病巣ができていないか確認する必要があります。