毎日それなりに歯磨きをしているつもりだけれど、どうも磨き残しが気になります。うまく磨く方法はあるのでしょうか。そこで本格的に歯科医に習おうと、歯学博士で口腔(こうくう)衛生が専門の江上歯科(大阪市北区)院長・江上一郎先生のもとへマイ歯ブラシを持参し、「正しい歯磨きの方法」について指導を受けてまいりました。

■「歯間」、「歯と歯ぐきの境目」、「かむ面」がむし歯になりやすい

早速、江上先生と3名の歯科衛生士の方が待ち受けておられ、診察台に横たわる筆者をぐるりと囲まれます。口をがばっと開かれ、筆者のマイ歯ブラシでの磨き方をチェック。と同時に、皆さんが、「やっぱり……」、「磨いていない」、「あかんわ」などと口々につぶやかれます。

つぶやきの真意について、江上先生はこう説明します。
「利き腕側の下の奥歯の内側が磨けていないと言っているんですよ。実はこの部分が最も磨き残しが多いんです。

隅々まで歯磨きをしているつもりでも、歯ブラシが当たっていない部分があります。そこには、細菌のかたまりである歯垢(しこう)が常に残りやすく、むし歯や歯肉炎を発生させます」

江上先生は、まず、次の「3大不潔域」を挙げます。
1.歯と歯の間(歯間)
2.歯と歯ぐきの境目
3.上の歯と下の歯のかみあわさる面

次に、磨き残しが多い部分について指摘します。
1.利き手側の下の奥歯の内側、歯と歯ぐきの境目
2.前歯の裏の歯と歯ぐきの境目
3.上下左右の犬歯(糸切り歯)付近、歯並びのカーブが大きい部分

では、ここはどのように磨けばいいのでしょうか。江上先生は説明を続けます。
「まず、歯ブラシを鉛筆のように軽く持ちます。次に、『歯ブラシの毛先で汚れをかき出す』ことをイメージします。力を入れる必要はありません。
手でギュッと歯ブラシを握ると、磨くときに力が入りやすくなるので注意してください。

歯磨きで大切なことは、『ブラシの先端が歯にしっかりと当たっている、と意識しながら、どの歯もまんべんなく磨く』ことです。
右利きの人は左側の歯ばかり磨くなど、磨き方に癖が出ることがよくあります。何気なしに手を動かしていると、ブラシが歯の表面にしっかりと当たっていない、無意識に磨きにくい場所は磨いていない、ということがあります。

歯磨きの基本の姿勢は、歯ブラシを歯に対して斜め45度に当て、細かく左右に磨くことです。むし歯になりやすい歯と歯の間の汚れは、丁寧に歯磨きをしても歯ブラシではなかなか取りきれません。歯と歯のすき間が大きい、つまようじが入る人は歯間ブラシを、それよりも小さい人は糸ようじを使用してください。1日1回、特に就寝前はこまめに掃除をするように、習慣づけましょう」

磨き残しの多い部分の磨き方について、江上先生はこうアドバイスをします。
「奥歯は、自分の親指の幅を目安にヘッドの小さな歯ブラシを選びましょう。奥歯の内側の歯にブラシの先端を当て、歯ぐきから歯の上面に向かって細かく上下に磨く、縦に動かすイメージで磨きます。

前歯の裏は、歯ブラシの先端を歯と歯ぐきの境目に当て、先端を使って前後に動かして縦磨きをするとうまく磨けます。

犬歯付近の歯並びがカーブする部分は、ブラシ全体を歯に沿うように当てて、細かく左右に動かしましょう。

また、歯ブラシや指で軽く歯ぐきをマッサージすると、血行が促されて歯肉のばい菌に対する抵抗力が高まり、歯周病を防ぐことにつながります。すでに歯周病の傾向がある人は歯ぐきから多少出血しますが、少々なら気にしなくてもよいでしょう」口腔洗浄器

「よし、歯ブラシがきちんと歯に当たっているな、と意識しながら磨くのがいい」と江上先生。毎日3回、きちんと磨いているつもりが、まったくそうではないことに気付きました。江上先生は、小学校の校医として子どもに歯磨きを教えられているそうですが、「大人でも、実は磨けていない人は多い」と言います。

どこの歯科医でも歯磨き指導はしてくれるそうです。確かな方法を知るためにも、一度かかりつけの歯科医院にマイ歯ブラシ持参で訪ねてみてはいかがでしょうか。