根管治療(歯の根の治療)を行っている際、抗生物質が処方されるケースはよく見られます。この場合の抗生物質の目的と有効範囲について解説します。

抗生物質では根管治療は行えない

「根管治療」とは、歯の根の中にある、歯の神経が通っている細い管を掃除し、感染物質を除去する治療です。根管治療は歯科治療の基礎となる重要なものです。

歯の神経を取り除くときは、悪化しないように丁寧で適切な治療を行う必要があります。

根管治療中に、抗生物質を処方することは比較的多いものです。

根の病気の原因は細菌のため、細菌を抑える抗生物質を服用することで、細菌を減らすことができるのではないかと思いがちです。

しかし、実際には抗生物質を飲むことで根の病気が治るかというと、そうではないのです。

抗生物質が効く仕組み

まずは、抗生物質がどのように効くのか、その仕組みを見てみましょう。

根の病気で抗生物質を服用すると、血管の中に薬の成分が入り、ある程度の濃度を維持して患部に届きます。そうすることによって、一時的に痛みや腫れなどの症状が緩和されます。

では、根の中の細菌は抗生物質でたたくことができるのでしょうか。根の病気(根尖性歯周炎-こんせんせいししゅうえん-)である歯は、すでに神経が死んでいる(壊死歯髄)か、根管長測定器神経がない(根管治療歯)ため、血が巡っていない状態です。つまり、いくら抗生物質を飲んでも、根の中の細菌に薬の成分が届くことはありません。

根管治療をするためには、抗生物質ではなく、感染した歯を抜歯して取り除くか、感染した歯の根の治療をする必要があります。

感染の広がりを防ぐ作用は期待できる

細菌などの感染源を取り除く根管治療においては、抗生物質で細菌をたたくことができないため、抗生物質の服用は必要ありません。しかし、細菌が根の中だけではなく、全身に拡がろうとしている場合には、抗生物質の効果に期待できます。

人間の身体にはもともと免疫力が備わっているため、外部から多少細菌が侵入しても、血液内の免疫細胞が細菌をやっつけてくれます。そのため、根の中の細菌が体中に拡がることはまれです。

しかし、体の抵抗力が落ちてしまうと、感染が全身に拡がってしまうこともあります。抵抗力が下がったり、感染しやすい病気を持っていたりする人には、抗生物質が必要になる場合があります。