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歯削る機器使い回し…高い滅菌費 改善の壁に

 多くの歯科で、歯を削る医療機器を滅菌せずに使い回している実態が明らかになった。ウイルスや細菌を患者にうつす心配があり、国は4日、滅菌を徹底するよう都道府県などに通知した。しかし患者ごとの機器交換は多額の費用がかかるため、一部の歯科は及び腰だ。
 
滅菌パックに入った歯科の「ハンドピース」。使う直前に取り出す
 東京都内の病院の歯科に勤める歯科医は、他の病院から数年前に着任し、現場の不衛生さに「これはひどい」と驚いた。
 
 歯を削る機器(ハンドピース)を使った後は、表面をアルコールで拭いて終わり。滅菌しないまま次の患者に使う。ゴム手袋も使い回しだ。改善しようと他の歯科医や歯科衛生士に働きかけたが、仕事が増えることを理由に拒まれた。近く、病院は辞める考えだ。(高圧蒸気滅菌器)
 
 ハンドピースを使うと、患者の血液や唾液が表面に付いたり、機器の内部に入り込んだりする。血液などにはウイルスや細菌が潜んでいる心配があり、消毒や洗浄では病原体を完全になくすことはできない。
 
 歯科で患者がウイルスなどに感染したという国内の報告はないが、米国ではB型肝炎ウイルスの感染例がある。B型肝炎は、倦怠感や発熱など症状が出るまでに1~3か月の潜伏期があり、原因の特定が難しい。国内での感染は「ない」のではなく、「分かっていない」という表現が正しい。
 
 このため日本歯科医学会の指針は、機器の使用後は、高温の蒸気で病原体を死滅させる滅菌処置を施し、患者ごとに滅菌された機器に交換することが勧められている。しかし、指針は必ずしも守られていない。
 
 国立感染症研究所の泉福英信室長の研究班が、特定の県の歯科医療機関に行った調査によると、「(患者ごとに機器を)必ず交換」は34%で、残りの66%の歯科では滅菌せずに複数の患者に使っていた。
 
 滅菌しない理由として多くの歯科医があげるのが、費用の高さだ。ハンドピースは1本約20万円。滅菌には1回30分程度はかかるため、患者ごとに交換するには少なくとも倍の本数をそろえなければならない。
 
 埼玉県草加市のある歯科医院では、ハンドピースを120本そろえ、午前と午後で滅菌を3回ずつ行っている。院長は「滅菌に手間がかかる分、歯科衛生士や歯科助手を多く雇っている。高熱の蒸気にかけるため、機器が傷み、修理回数も増える」と説明する。
 
 患者ごとに機器を取り換えると国に届け出た歯科医療機関は、診療報酬で新規患者は260円、再診患者は40円を毎回それぞれ上乗せして請求することが認められているが、「その金額ではとても見合わない」(同院長)という。
 
 国は歯科に滅菌の徹底を求めていく考えだ。これが掛け声倒れに終わらないように、診療報酬による評価の議論と機器の取り扱いへの指導を、並行して進める必要がある。
 
 ただ、全ての歯科が対策を講じるまでには時間がかかる。患者ができる「自己防衛策」はないのだろうか。
 
 まずは、滅菌されたハンドピースかどうか、診療の際に尋ねてみることだ。滅菌された機器は「滅菌パック」という透明な袋に入っていたり、紫外線で清潔な状態を保つ装置に保管されていたりする。患者の椅子の近くに取り付けられたままになっているのは、滅菌されていないとみてよい。
 
 ハンドピースの取り換えを届け出ている歯科は約7000あり、歯科医で作る院内感染防止対策促進協議会のサイト(http://kansenboushi.com/)が届け出施設の一覧表を掲載している。これら施設が実際に滅菌しているかどうか保証はできないが、歯科を選ぶ時の参考にはなる。
 
 歯科は全国約7万施設のうち、98%が小規模な診療所だ。雇われている歯科衛生士などの立場は弱く、院内のチェックが利きにくい。歯科の姿勢を改める一番の特効薬は、患者の厳しい目かもしれない。(医療部 渡辺理雄)

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